御射山まつり
御射山祭り
風の祭りから花火大会へ、中世武士の祭典が今に伝わる。
山々に囲まれて打ち上げられる花火は、とても迫力があり身体にそのすごさが伝わってきます。また、きおいが行われ遠山郷は祭り一色に燃え上がります。
本年(2023)の御射山祭り日程
2023年 8月26日(土)実施決定
コロナで縮小実施をしておりましたが、
今年は本格打ち上げです。
お楽しみに♪
みさやま花火フォトコンテスト2015(開催)
遠山の御射山祭り
御射山祭りは、和田と南和田の氏神である諏訪神社の祭礼です。以前は新暦の8月26日、27日の両日が祭日でしたが、現在では8月の第4土曜日となっています。
初日の宵祭りでは、午後6時頃からキオイが行なわれます。子供や若者たちが趣向をこらした神輿を担ぎ、中学校を出発して和田商店街を諏訪神社へと向かって練り歩きます。
午後7時半からは大煙火大会です。地区の人達は当日朝早くから遠山川岸にシートを広げて場所とりをし、花火見物に備えます。遠山谷の狭い空いっぱいに大きな花火が広がり、轟音が山にこだましておなかに響きます。
かつては2日目の本祭りで、朝から青年会による演芸街頭公演が遠山郷の各所で行なわれたほか、夕方からは舞踊やクラブ発表会などのイベントショーが行なわれました。
路上いっぱいに輪となって「せしょう」「のーさー」などの盆踊りが夜を徹して行なわれました。
御射山祭の歴史
全国の諏訪神社の本宮である諏訪大社では、鎌倉時代から上社・下社それぞれに御射山祭が行なわれていました。
旧暦の7月下旬、八ヶ岳山麓で巻狩、草鹿射ち、相撲などの武芸が行なわれたほか、里宮では御霊会風の行列が練り歩きました。
霧ヶ峰高原の西北の「旧御射山」と呼ばれる場所には、下社の御射山祭の舞台となった巨大な土壇(コロシアム)の遺跡が残っています。この土壇には将軍や北条氏のほか、鎌倉幕府のそうそうたる武将が桟敷を連ねていました
北条氏は信濃にも多くの領地を持ち、諏訪神への崇敬を厚くしていました。こうしたこともあり、御射山祭は幕府の下知によって信濃国内に領地をもつ御家人すべてが回り番で費用を負担しました。
祭りは武将ばかりでなく一般民衆にも見物が許され、身分の上下を問わない全国規模の大イベントだったのです。
下社の御射山祭りは、室町時代に下社大祝(おおほうり、神職の最高職)の金刺氏が上社によって滅ぼされてからは衰退しましたが、祭典に集まった武士たちによって御射山祭の風習は全国に広められ、「ミサヤマ」と呼ばれる地名や神社が現在でも各地に残っています。
飯田市南信濃和田の御射山祭は、祭礼そのものにその名が残っている点で興味深いものがあります。
- 諏訪大社下社の旧御射山の祠
金刺氏は信濃国造の子孫で、その名は欽明天皇の宮殿(磯城島金刺宮)に舎人として仕えたことにちなむ古代氏族です。
彼らの本拠地は下伊那地方であり、後に諏訪地方に進出して大祝の地位についたともいわれています。また、上下諏訪大社では「諏訪神人」と呼ばれる民間宗教者が各地を巡って信仰を広めました。
旧南信濃村の和田中新町には「金差行者供養塔」があり、下社大祝系の諏訪神人がこの地にやってきていたことを物語っています。
また三信遠地域には、藁や木の枝で作った鹿を射るシカウチ神事が伝えられており、これらも諏訪の御射山祭との共通性が指摘されています。
現在の和田諏訪神社の御射山祭でも、弓道大会が行なわれています。武士たちが狩りや流鏑馬に興じた中世の御射山祭の精神が、こんなところに残されているのかもしれません。
- 天龍村大河内のシカオイ祭り
御射山祭の起源
金井典美氏によれば、御射山祭は二百十日に先立って山上で忌籠もりをし、贄として動物を捧げることで祟りやすい山の神を鎮めて台風の無事通過を祈願するのが本来の目的だったといいます。
諏訪神はもともと風よけの神として信仰されていました。諏訪大社には薙鎌と呼ばれる風封じの神器があります。これは五行説の「金克木」に基づいた思想であるといわれています。つまり金気である鉄鎌を、木気である木に打ち込むことにより、間接的に木気である風を封じこめようという呪法なのです。
旧南信濃村でも、九月一日には各家で草刈り鎌を竿の竹の棒に縛り付け、軒先につるす風習がありました。鎌が風を切るという風除けのまじないです。
現在の南信濃和田の御射山祭に風除けにまつわる神事などは伝えられていませんが、そうした背景を心にとめておくと、祭りの楽しみもまた違ったものになるかもしれません。
●参考文献
『日本の神々 神社と聖地9』 谷川健一編 1987 白水社
『諏訪信仰史』 金井典美 1982 名著出版
『南信濃村史 遠山』南信濃村史編纂委員会 1976 南信濃村
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