秋葉信仰とは
秋葉信仰とは
秋葉山のはじまり
秋葉山は養老二年(718)に行基が開いたとされ、初めは大登山霊雲院と呼ばれていました。本尊は行基作と伝えられる聖観音像で、れっきとした仏教寺院だったのです。弘仁年間(810~823)に嵯峨天皇の勅願によって七堂伽藍が建立され、秋葉山秋葉寺と改称されました。
秋葉山三尺坊権現の出現
秋葉山三尺坊は遠江天狗の総帥といわれるほど有名な天狗ですが、彼の正体は信州戸隠生まれの修験者でした。
秋葉寺の伝承によれば、彼は4歳のときに越前蔵王権現堂に修行に出ました。
26歳のときに大阿闍梨となって自らの住まいを三尺坊と名付け、27歳のときに不動三昧の秘法を修して迦楼羅の姿に変身しました。
三尺坊は白狐に乗って諸国を巡り、大同四年(809)に秋葉山に降り立ちました。
そのとき現れたガマガエルの背中に「秋葉」の字が浮かんでいたことから、三尺坊みずからそれを山号寺号としたといいます。
しかし、三尺坊の到来時期にはさまざまな説があり、永仁二年(1294)や元亀二年(1571)とする文献もあります。
『信濃名僧略伝集』という資料には、永観年間(983-984)に三尺坊が戸隠山で修行した、という記されています。
日本の歴史からみると、修験者の活躍が盛んとなるのは平安時代中期以降、そして天狗伝承が広まるのは鎌倉時代以降です。
こうしたことから、秋葉山の歴史を次のように想像することができます。すなわち平安中期に三尺坊という名の修験者が戸隠からやってきて、秋葉山を中興しました。
鎌倉時代になって、彼の業績が天狗として神格化されたのでしょう。
秋葉山の盛衰
戦国時代、一帯を領有していた天野氏が武田と徳川の狭間で揺れ動いていたため、秋葉山も荒廃を余儀なくされていました。
それを再興したのは、徳川家康の隠密として活躍した功績で秋葉寺別当に任ぜられた茂林光幡という人物です。
光幡は秋葉山再興のために秋葉寺の宗旨を曹洞宗へと変えましたが、依然修験系の色合いが強く、神仏混淆の寺として存続していました。
やがて秋葉山は火伏せの神として関東・東海・北陸に信仰を広め、その参詣道が秋葉街道と呼ばれるようになったのです。
時代が明治に変わると、太政官布告の神仏分離令が拡大解釈され、全国に廃仏毀釈運動が広がりました。
秋葉寺では、秋葉山は神社であるとする修験側と、もともと寺院なのだから神仏混淆ではないと主張する寺僧側との対立が起こりました。
そんな中、住職の後継者問題に浜松県が介入し、寺の堂宇は封印されて宝物は没収・破壊されてしまいました。
秋葉山は人も住まずに荒廃していましたが、明治六年にふもとの住民たちがカグツチノミコトを祭神として秋葉神社建立を県に願い出、許可されました。
一方、寺僧側も秋葉寺の再建を明治十三年に許されましたが、すでに山頂には秋葉神社が建てられていたことから、山のふもとに堂宇が建立され、現在に至っているのです。
- 秋葉神社山宮(春野町)
- 秋葉山から遠州灘を望む
■参考文献
『秋葉山三尺坊大権現』 昭和60年 野崎正幸著 秋葉山秋葉寺監修
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